ピンクやパープルのパステルカラーと太陽の光。ファンシーでキラキラした世界がまぶしく目に飛び込んでくる──。映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は、子どもの頃に大好きだった圧倒的な〝ゆめかわいい〟世界観がひろがっていました。

 

かわいいが止まらないパステルカラーの世界観

舞台は夏のフロリダ。「ディズニー・ワールド」の外側の環状線沿いにあるのは、モーテルやドラッグストア、アイスクリーム屋さんなど、ポップな〝アメリカっぽさ〟を感じさせる建物たち。

 

センスの良いお洒落さとは無縁なのに、胸の奥にしまっていたゆめかわいいのアンテナが強烈に反応していきます。

建物全体がパープルのモーテル「Magic Castle」。主人公の6歳の女の子・ムーニーと母親のヘイリー(ブリア・ヴィネイト)が住んでいるのがここ。ふたりのファッションもパステルカラー(ヘイリーはヘアカラーまで!)で、とにかくトータルで〝ゆめかわいい〟を思いっきり体感できます。

 

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ちなみに、母親役のブリア・ヴィネイトは、ショーン・ベイカー監督からインスタグラムに直接メッセージが届いて、この役をオーディションを受けたそう。SNSでヘイリー役をゲットしたなんて、まさにいまどきのチャンスのつかみ方!

 

ヴィジュアルとは真逆。過酷な現実を描いたストーリー

ヴィジュアルは思いっきりキラキラでファンシーなのに、ストーリーは厳しすぎる現実を突きつけられます。

ムーニーとヘイリーがモーテルに住んでいるのは、アパートメントを借りて住むことができないから。アメリカの貧困層のなかでも、最下層の暮らしです。

 

2週間ごとに、モーテルの宿泊費を支払う生活。シングルマザーであるヘイリーはとても若く、定職につけずにいます。食事と宿泊費を支払うだけでやっとな毎日……。

そんな過酷な現実を突きつけられてもなお、キラキラした世界を感じられるのはムーニーの子どもらしい無邪気さが描かれているから。それもそのはず、監督のショーン・ベイカーは、大恐慌の時代に貧困を生きた子どもたちを描いた短編コメディ『ちびっこギャング』に影響されている、そう。そして、『ちびっこギャング』は、

 

「経済的な側面は背景として描かれているだけで、フォーカスされたのは子どもたちのいわゆる“子供時代”と“大冒険”だった。それをこの映画でもやりたいと思った」

 

と話しています。

 

つらいつらい現実があったとしても、子どもにとってはキラキラした毎日があるし、数ブロック先の知らない場所へ行くだけでも大冒険になり得る──。目の前のことがなにもかも楽しかった時代は、大人の事情が入る余地がないとわかると救われた気にもなりました。

 

そう感じられたのはきっと、どのシーンもムーニーの視点(=子どもの目線)で撮影されているから。子どもの身体で見えるぼうぼうに生えた雑草の高さや地面との距離の近さ、大人との距離感や息づかいはとてもリアルで、ぜひ映画館で体感してほしくなります。

 

フィクションを通して現実を知る

 

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パステルカラーに彩られた世界と過酷な現実。そのギャップは、これでもかというほど胸を痛めてきます。

 

監督は、撮影が始まる前の約1か月ほど、撮影現場の近くに滞在していたそう。そのときに、まさしくムーニーとヘイリーのような親子に出会い、「自分たちが作り出した世界がいかに正確で、真実味を帯びてるかとういうことに自信を持つことができた」とも話しています。

自分にとって心地いい情報だけで生きていくことができるいまの時代。でも、過酷な現実を知ると、自分のなかの何かが少し変化していくのがわかります。まずは知ること──。その一歩が自分の世界を深く広くしてくれるはず。

 

夏はいつだって自分を成長させてくれる季節、この映画を見るとそう信じたくなります。

 

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
全国公開中
配給:クロックワークス
(C)2017 Florida Project 2016, LLC.