ラーラぱどでWEB限定の連続ドラマ「きみはまだ運命の恋を知らない」は、5分で読める恋愛シナリオドラマ。全15話を本家の月9にチャンネルを合わせる5分前、月曜隔週20時55分にWEB限定で公開中!ドラマの脚本は「AbemaTV」で開催された第1回「シナリオライター賞」で、全600作品の応募の中から「大賞」に輝いた山下すばるさんが書かれました。

 

前回のあらすじ

みよりは不思議なチカラを持った大学生・ナツキに「運命の人に会える」と予言され、喫茶店『プルミエラムール』で小学生時代の初恋の相手・千に再会する。しかし、運命の再開は一瞬で終わってしまった。もう一度千に会うために、イチかバチか、ナツキの部屋を訪ねる。

 

【連続シナリオドラマ】きみはまだ運命の恋を知らない/第7話

 

本作の人物紹介

【月野みより】
恋も仕事も家も失った29歳。喫茶店『プルミエラムール』でアルバイト中。
運命の人・千くんに会うために、不思議なチカラを持った大学生・ナツキに助けを求める。
【神生ナツキ】
20歳の大学生。恋守神社の神主の一人息子。
不思議なチカラを持っている。
【東雲 千】
29歳。小学生時代のみよりの初恋の相手。子供の頃は貧乏で、いじめに遭っていた。
【高梨香穂】
29歳。みよりの友人。
【青柳陽一】
42歳。喫茶店『プルミエラムール』の天然店長。

 

第8話『恋のキューピット』

○ナツキの部屋・居室(夜)


テーブルの上にタッパーに入った手料理を並べていくみより。
ご飯、サラダ、唐揚げ、肉じゃが、卵焼きなどが並んでいく。

 

ナツキ「なぜ勝手に人の部屋に来て、手料理を? 一体どういう思考回路でこの状況が生まれるんだ」
みより「あ、大丈夫!私、調理師の資格持ってるから!料理教室でも働いてたし!」
ナツキ「いや、そういうことじゃなくて」

みより「なんていうか、お礼。公園で助けてくれたり、千くんのことも。ちゃんとお礼してなかったから……」

 

ナツキ「そういうのはいい。要求はなんだ」
みより「よ、要求だなんて!そんな(ブンブンと首を振る)」

 

ナツキ「言わなくてもわかる。どうせ運命の人にまた会う方法が知りたいとか?」

みより「(図星で)うっ……」

 

ナツキ「いくら向こうが急用ですぐに帰らなくちゃいけなくなったからって、連絡先ぐらい聞けなかったのか? せっかく会えたのに」
みより「仕方ないじゃん!てか、なんでもうそこまでお見通しなのよ?!」
ナツキ「いやまぁ、なんとなく」
みより「ずっと疑問なんだけど、その、なんとなくなんでも分かる能力ってなんなの?なんかズルくない?」

ナツキ「うーん。じゃあ例えば、みよりは今日は、雨降ると思う?」
みより「え?降らないでしょ」
ナツキ「なんで?」
みより「え、なんでって空が、そんな感じじゃないもん」
ナツキ「それと同じ」

 

みより「?」

ナツキ「人は空の色とか、湿度とか、空気のニオイとかで、別に気象予報の知識がなくったって、なんとなく天気がわかる事もあるよね。食べ物だって、色やニオイでなんとなく美味しそうって思う。料理が得意なみよりは、とくに料理の勘は人より鋭いはずだ。これとこれを組み合わせたら美味しくなるって、なんとなくわかるだろ?」

 

みより「……まぁ」

 

ナツキ「僕はたまたま、勘が鋭いってだけだ。とくに恋愛の。この人とこの人は運命の相手だって、それがなんとなく顔が見えたり出会いが思い浮かんだりしてわかるんだ。わかるというか、感じ取るっていうか。ついでに時々、危険を察知する事もあるし、名前が予想できる時もある」

 

みより「なんか思ってたより、なんとなくなんだね……」

ナツキ「ただ、僕の勘は外れたことが無い!」

みより「……」

 

ナツキ「でも、分からないことは分からないからあんまり期待しないで欲しいんだ。たとえば今日だって、君が来ることが分かっていたら僕は家を留守にしていた」
みより「そんなに嫌がらなくても」

 

ナツキ「それに……(箸でじゃがいもを掴んで)これが美味しいかどうかも、僕には食べるまでわからない」

 

ナツキ、ゆっくりと箸を動かし、肉じゃがのじゃがいもを口の方に持っていく。

 

みより「(緊張して)……」

ナツキ、じゃがいもを口に入れて――。

ナツキ「……」

みより「……ど、どうかな?」
ナツキ「……!(ハッとして目を見開く)」

 

みより「ま、まぁ、煮物は結構、好みあるよね。濃いとか薄いとか、甘いとか、辛いとか……あ、そっちの唐揚げなんかは、若い人も好きだと思うけど」

 

ナツキ「(目を見開いたまま固まって)……」
みより「……?あの?…大丈夫?」
ナツキ「……」

 

ナツキの目から、一粒の涙が流れて。

 

みより「えぇっ?!」

 

 

○喫茶『プルミエラムール』・前(夜)

歩いてくる千。
千の手には小さな花束。
店の前に着き、窓ガラス越しに店内を覗く千。

 

店内では、青柳が一人でカウンターでコップを拭いている。

千「……いるわけないか」

少し寂しそうにその場を去っていく千。

 

 

○大通り・歩道橋の下(夜)
歩道橋の下を歩いている千。

 

○同・歩道橋の上(夜)

歩道橋の上をぼんやりしながら歩くみより。

すぐ近くに千が歩いている事に気付かない。
お互いに気付かないまま、通り過ぎる二人。

みより「(うーんと首をひねり)なんだったんだろう、あれ……」

 

 

○(回想)ナツキの部屋・居室(夜)

みよりの料理を食べながら、涙を流すナツキ。

みより「えっ、ど、どうしたの?えっ、不味かった?泣くほど?そんなに?」
ナツキ「……ちょっと、帰ってくれないかな」
みより「えっ……」
ナツキ「一人になりたいんだ……」

 

(回想終わり)

 

○喫茶『プルミエラムール』・店内(夜)

向かい合ってドリンクを飲んでいるみよりと香穂。
みよりは頭を抱えている。

 

みより「何がいけなかったんだろう……」

 

香穂「何がって、考えてもみなよ。ちょっと助けてあげて、アドバイスしてあげただけのアラサー女が、いきなり大学生の部屋に手料理持って押しかけてくるんだよ?それ、怖くない? ホラーだよ。世にも面倒くさい物語だよ!」

 

みより「うわ、本当だ。そうだよね、怖いよね……どうしよう。もう何も教えてもらえないよ。もう千くんに一生会えないかも……」
香穂「あ、名前は? ネットで検索してみたら? 千くん、SNSとかやってるかも」
みより「そんなのもうとっくにしたよ。なんも出てこなかった」
香穂「そっかぁ。まぁでも大丈夫!ほら、二人は運命なんだからさ」
みより「本当に運命なのかな……あれ、てかそういえば何なの? 香穂の話って。家じゃできない話なの?」

 

香穂「あぁ……あのね、実はね……」
みより「……」

 

香穂「……ごめん!私、もうみよりを部屋に泊めてあげられないの!まじごめん!」
みより「!えっ、なんで?!」
香穂「いや~なんかね、隣の部屋から会話がうるさいってクレームが来ちゃってさ。大家さんに、怒られちゃった!」
みより「そ、そんな……」
香穂「ごめんねー、うちのアパートの大家さん、厳しいんだ。怒らすと面倒臭いっていうか……と、いうわけでね」

 

香穂、机の下に隠すように置いてあったみよりのキャリーケースとトートバッグを取り出す。

香穂「本当、ごめんね!」
みより「えっ、もう!? もう今日出ていくの?! 今から!?」
香穂「うん!すまん!」

 

 

○公園・前(夜)


キャリーケースと大きなトートバッグを持ったみよりが息を切らしながら歩いている。
公園の中に自販機とベンチを見つけるみより。

 

みより「うわぁ、デジャブ……」

 

 

○同・ベンチ(夜)


ベンチに座り、月を眺めているみより。

 

みより「……千くん、どこにいるんだろ……」

 

みより、缶ジュースをぐっと飲んで。
みより「いや、今は千くんより、泊まるとこ探さなきゃ」

 

みよりに近づいてくる足元。
みより、スマホで宿泊情報を検索していると、人の気配を感じて。

みより「?(と顔をあげる)」

 

ナツキが立っている。

みより「!」
ナツキ「公園で寝るのはやめた方がいいって言わなかったっけ?」

みより「ね、寝ないわよ!こんなとこで!」

隣に座るナツキ。

みより「あの、さっきはごめんね。急に押しかけて……怖かったよね」
ナツキ「怖い?何が?」
みより「えっ。だってナツキくん、泣いてたから」
ナツキ「それは別に……そんなことより、行く所がなくなったのか?」
みより「うん、まぁ。でも大丈夫。東京にはホテルもネカフェも沢山あるし」

 

ナツキ「うちに泊まれば?」
みより「えっ?」

 

ナツキ「いや、違うな……住めば?」
みより「はい?!」

 

ナツキ「いや、違うな……来て欲しいんだ。僕が」
みより「な、何言ってんの! 変な事言わないでよ!」

ナツキ「だから遠慮しなくていい、一緒に住もう!」

 

みより「あの、これ、新手の詐欺かなにか?だったら私、お金とか持って無いから」
ナツキ「失礼だな。僕は子供の頃、テレビで稼いだ貯金が残ってるし、お金には困ってない。君からお金を取る気なんてないよ」
みより「じゃあ、一体なんのメリットがあってそんなこと……」

 

ナツキ「それは……好きだから」

 

みより「!」

 

ナツキ「みよりの料理が!めちゃくちゃ美味しかった!もっと食べたい!」

 

みより「なんだ料理か……いやいや!だからって、それだけで一緒に住むって発想にはならないでしょ!」

ナツキ「でも、行く所が無いんだろう?このままみよりがどっかで野垂れ死んだらと思うと、すごく心配なんだ……」

 

みより「ナツキくん……」

 

ナツキ「もうあの料理が食べられないのかと思うと」
みより「はいはい、料理がね!」

 

ナツキ「それに……もう一度会いたいんじゃないのか?……運命の人に」
みより「!」

ナツキ「みよりが毎日僕のご飯を作ってくれるなら、僕は君の運命の恋を全力でサポートする。これは画期的な交換条件だと思わないか? 一緒にいる方が、僕もみよりの恋のことがよくひらめく気がするし!」

 

みより「……もう一度、会えるの?……千くんに?」
ナツキ「会える!」
みより「……本当に?……絶対?」
ナツキ「言ったはずだ。僕の勘は、外れた事がない!」
みより「……」

 

みより(ナレーション)「本当に、いいのだろうか?」

 

 

○ナツキの部屋・アパート前(夜)


ナツキと一緒に歩いてくるみより。

 

みより(ナレーション)「この人を、信じても……」

 

 

○同・前(夜)


玄関ドアを開けるナツキ。

みより(ナレーション)「こんな、出会った時からずっとよく分からない不思議な男の子を……」

ナツキ「あ!……ちょっと待って!」
みより「?」

ナツキ「よし。こうしよう……僕が入ったら、いったんドアを閉めるから。そしたらみよりが5秒後にドアを開けて入る」

 

みより「え? なんで?」

ナツキ「なんとなくだ!」

みより「お、おっけ……わかった!」

先に部屋に入るナツキ。

 

みより(ナレーション)「これからこの部屋で、どんな生活が待っているんだろう」

みより「(5、4、3、2、1)……」

そっとドアを開けるみより。

 

目の前に、ナツキが立っている。

みより「……?」
ナツキ「……おかえり」
みより「?……た……ただいま?」

ニッコリと微笑むナツキ。

みより「……」

 

みより(ナレーション)「こうして、私とこのちょっと不思議な大学生、神生ナツキとの共同生活が始まった――」

 

 

 

第8話・了

脚本/山下すばる

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第9話「涙の理由」

9月24日(月・祝)午後8:55公開

お楽しみに!