ラーラぱどでWEB限定の連続ドラマ「きみはまだ運命の恋を知らない」は、5分で読める恋愛シナリオドラマ。全15話を、(今は月9が終わっちゃたけど)本家の月9にチャンネルを合わせる5分前、月曜隔週20時55分にWEB限定で公開中!ドラマの脚本は「AbemaTV」で開催された第1回「シナリオライター賞」で、全600作品の応募の中から「大賞」に輝いた山下すばるさんが書かれました。

 

前回のあらすじ

運命の人・千に再会する為に、ナツキに会いに行ったみより。みよりの手料理に感動したナツキは、「運命の恋をサポートする代わりに一緒に暮らして料理を作って欲しい」とみよりに提案。居候中だった友人・香穂の家からも出ていかなければいけなくなったみよりは、ナツキと暮らし始めることに――。

 

【連続シナリオドラマ】きみはまだ運命の恋を知らない/第8話

 

本作の人物紹介

【月野みより】
29歳。喫茶店でアルバイトをしている。運命の人・千に会う為にナツキと同居することに。
【神生ナツキ】
20歳の大学生。恋守神社の一人息子。
不思議なチカラを持つ恋のキューピット。
【東雲 千】
29歳。みよりの初恋の人。子供の頃は貧乏で、いじめに遭っていた。
【高梨香穂】
29歳。みよりの友人。
【水原あかね】
20歳。大学生。ナツキと同じ大学に通い、同じアパートに住んでいる。

 

 

第9話『涙の理由』

○ナツキの部屋・アパート前(朝)
よく晴れた爽やかな朝。

みより(ナレーション)「ナツキと暮らし始めて、二週間が経った――」

 

 

○同・居室(朝)
シャッとカーテンを開けるみより。
まだベッドで寝ているナツキ。

みより「ちょっと! いつまで寝てんの、遅刻するよ!」
ナツキ「……うーん、あと五分、五分だけ」
みより「もうっ!」

 

みより、ナツキの寝顔を見て。

みより(ナレーション)「一緒に暮らして分かったけど。あんなに変な子だと思ってたのに、こうしてるとただの大学生で……」

 

幸せそうに眠るナツキの寝顔。

みより(ナレーション)「この、本当に天使みたいな寝顔を見ていると……」

みより「……なんかムカツク」
みより、ナツキの布団を無理やり引っ張り剥がす。
ナツキ「!」

 

 

× × ×

朝食を食べているみよりとナツキ。

みより「で、いつになったら千くんに会わせてくれるの?」
ナツキ「あぁ。そのうち」
みより「もう! そんな事言ってもう二週間も経つじゃない!」
ナツキ「仕方ないだろ、まだいい方法が思いつかないんだから」
みより「……(腑に落ちない)」
ナツキ「あ、これ。今日の……」
ナツキ、みよりにメモを渡す。
みより「はいはい(メモを読んで)今日はグラタンね……あのさ、ずっと気になってたんだけど。なんでいつも食べたい物を紙に書くの? 面倒臭くない?」
ナツキ「……別に、なんとなく」

 

 

○同・居室(昼)
掃除機をかけたり、散らばった服や絵の道具を片付けて、掃除をするみより。
みより、描きかけのキャンバスを眺める。
そこには二羽の鳥が描かれている。

 

 

○喫茶『プルミエラムール』・店内(昼)

バイト中のみより。

カウンター席に座っている香穂がスマホのメールを見て。
香穂「あ、面接、受かってた!」

みより「! おめでとう! どんな仕事?」
香穂「んっとね、ケータリングの会社」
みより「ケータリング……それってパーティとかに呼ばれたりするような?」
香穂「そうそう! なんかさ、ついでに良い出会いとかありそうじゃない? 私、8年後の運命の人なんて待ってられないし」
みより「なるほど……いいなぁ、私もそろそろ仕事探さなきゃ。いつまでもこんな生活してられないもん」

香穂「よく言うよ。そんな事言って、結構楽しそうじゃん。ナツキくんとの生活」
みより「別に楽しくなんて。住み込みの家政婦みたいなもんだよ」

 

香穂「でももう一緒に住んで二週間でしょ? さすがになんかあった?」
みより「何かって?」
香穂「ほら、夜、同じ部屋にいると思ったらなんかドキドキして眠れないとか、うっかりお風呂場で鉢合わせたら、あれ、意外といい体してるじゃん?ってなったりとかさ! そういうの! そういう話、くれよ!」

みより「無いよそんなの。ナツキはまぁ、黙ってると可愛いけど、やっぱり何考えてるか分からないっていうか……」
香穂「うわ、さりげなく呼び捨てになってる」
みより「そもそもナツキって、女の子に興味あるのかな? 彼女とかいそうな気配も無いし。大学に行く以外は、ずっと家で絵ばっかり描いてる」

 

香穂「まぁ、彼女がいたらわざわざアラサー女は拾わないよね……ところで、肝心の千くんは?」
みより「それな」

 

 

○ナツキの部屋・キッチン(夜)
エプロン姿のみより。鍋掴みを使って、オーブンからグラタンを取り出す。
美味しそうに出来上がっているグラタン。

その時、玄関チャイムの音が鳴る。

みより「? ナツキ! 誰か来てるよ!」
ナツキ(声)「(居室から)ごめん。今、手が離せない」

 

 

○同・居室(夜)
キッチンから来たみより。
ナツキは絵を描いている最中で、両手に絵の具がベッタリ付いている。
みより「?」
真剣な顔のナツキ、手に付けた絵の具で背景を塗っていく。
みより「なんで手で描くかな……もう!」
しぶしぶ玄関に向かうみより。

 

 

○同・玄関(夜)

ドアを開けるみより。
部屋の前に、若い女の子が立っている。水原あかね(20)。
あかねはたこ焼きがたくさん乘ったお皿を持っている。

 

あかね「(みよりを見て)えっ……誰……」
みより「……あ、えっと、ナツキなら今、ちょっと手が離せなくて……」

 

あかね、みよりのエプロン姿を見て、あからさまに眉間にしわを寄せる。

 

あかね「あの、ナツキとはどういう……?」
みより「あ、違うの! 私は別に」

 

ナツキ「誰だった?」
ナツキ、洗ったばかりの手を拭いながら様子を見に来て。

ナツキ「なんだ、あかねか」
みより「?」
あかね「たこ焼き……いっぱい焼いたから持って来たの。ナツキ、食べるかなと思って……でも、必要ないみたいだね」
たこ焼きを持ったまま、走って行ってしまうあかね。

 

みより「えっ、ちょっと! 待って!」

 

ナツキ「あかね! たこ焼きは置いてけよ!」
みより「えっ、そこ? 彼女じゃないの? 追いかけた方がいいんじゃ」
ナツキ「追いかけなくてもどうせ帰ってくる。あかねもこのアパートに住んでるから。それに別に、彼女ではない」
みより「でも、あの子はナツキの事が好きなんじゃ……」
ナツキ「まぁ、今はそうだな。でも、あかねにはちゃんと他に運命の人がいる」
みより「はぁ? バカ。もういいよ、私が行くから!」
ナツキ「えっ?」

 

みより、エプロンを脱ぎ捨てて、あかねの後を追って出ていく。

 

 

○住宅街(夜)
あかねを探しながら走っているみより。

 

 

○公園・前(夜)
息を切らして走ってきたみより。
ベンチに座っているあかね見つけて。
みより「……」

 

○同・中(夜)
泣きながらたこ焼きを食べているあかね。
みより、あかねに歩み寄って。

みより「あの、あかね……ちゃん?」
あかね「……(みよりを睨んで)」
みより「誤解だから! 私とナツキは、そういう関係じゃ」
あかね「そんなの分かってます」
みより「えっ」
あかね「見たら分かります、結構年上だし」
みより「と、歳は関係ないでしょ!……じゃあ、どうして……?」
あかね「だってナツキ、追いかけて来てくれないから……」
みより「……」

 

 

○住宅街(夜)

たこ焼きを食べながら歩いているみよりとあかね。

みより「(たこ焼きをもぐもぐしながら)あ、おいひい……これ」
あかね「……あたしとナツキ、同じ大学なんです。去年、あたしが大学で元カレにつきまとわれてる時、ナツキが助けてくれて。ナツキはなぜか、クマの着ぐるみを着てました……」
みより「あのクマ……あれ、戦闘服なの?」
あかね「さぁ。でも効果はありました。元カレ、本物のクマだと思って逃げて行って。その姿がまぁ間抜けで。あたし、その時、久しぶりに外で声出して笑いました」
みより「……なんか、素敵な出会いだね」
あかね「でしょ? しかも同じ歳で、同じ大学で、たまたま同じアパートに住んでるんですよ? あたし、これは絶対、運命だって思いました……でも、ハッキリ言われました。違うって。運命じゃないって……」
みより「……」
あかね「じゃあなんであたし、ナツキの事、こんなに好きになっちゃったんだろう……これが運命のせいじゃないなら、誰のせいなのかな……」
みより「あかねちゃん……」

あかね「……あ、知ってます? ナツキって、自分の運命の人は見えないんです」
みより「そうなの?」
あかね「でも、周りの女の子の運命の人は分かっちゃう。だからなのかな? ナツキは恋をした事がないんです……」
みより「……」

 

 

○ナツキの部屋・居室(夜)


電気が消えた部屋。

帰ってくるみより。

背中を向けて、ベッドで横になっているナツキ。

 

みより「ただいま……ってもう寝てるか」
ナツキ「(起きていて)……おかえり」
みより「あっ、起きてたんだ」
ナツキ「(背を向けたまま)うん。大丈夫だった? あかね……」
みより「もう、気になるなら追いかけてあげればいいのに……」
ナツキ「そんな事をして何になる……僕がいなくても、あかねにはちゃんと運命の人がいる。優しい男だ。イタリア人の」
みより「イタリア人なんだ……」

 

みより、ナツキの背中をじっと見つめる。

 

みより「(なんだか寂しそうに見えて)……ナツキだってさ、別に、運命じゃなくてもしてみたらいいのに。恋とか」
ナツキ「……」
みより「若いんだしさ。ナツキはモテるよ。黙ってたら」
ナツキ「僕は……いつかいなくなるなら、最初からいない方がいい」
みより「いなくなるかどうかなんて分からないじゃない。運命だって、変わるかも」
ナツキ「変わらないよ、運命は……」
みより「……」
ナツキ「……僕は運命の恋には勝てない」

 

みより、テーブルの上を見ると、空になったグラタン皿が置いてある。

 

ナツキ「グラタン、ありがとう。美味しかった。やっぱりみよりは、料理が上手いな」
みより「それはどうも……」

ナツキ「……癖なんだ」
みより「えっ?」
ナツキ「食べたい物を紙に書くの、子供の頃の……」
みより「……?」
ナツキ「僕が10歳の頃だ。その頃、僕の母さんは出会ったんだ、運命の人に……」
みより「えっ?」
ナツキ「そして、僕と父さんを捨てて、出て行った……」

 

 

○(以下回想・10年前)道(夕方)
キャリーケースを引いて去っていく母の後ろ姿を、寂しそうに見つめているナツキ(10)。

ナツキ(ナレーション)「僕はそうなる事をもっとずっと子供の時から知っていた。だけど、どこかでそれが外れる事を信じてもいた。母さんはもしかしたら、運命の恋より、自分を選んでくれるんじゃないかって」

 

 

○神生家・室内(昼)


ナツキが折り紙に『グラタン』と書いてから、大事そうに鶴を折っている。

ナツキ(ナレーション)「僕は母さんが運命の人と出会った日から、毎日食べたい物を紙に書いて、母さんに渡す事にした」

(回想終わり)

 

 

○(戻って)ナツキの部屋・居室(夜)
ナツキ「紙に書けば、形に残る。そうすればきっと、母さんはそれを無視できない。簡単には忘れられないし、捨てられない。毎日書き続ければ、毎日母さんは帰ってくるはずだって。あざとい子供だ。でも、僕は結局、運命の恋には勝てなかった……」
みより「……」
ナツキ「すごく似てた……」
みより「?」
ナツキ「みよりの作る料理。母さんの味に。いつも今日で最後になるかもしれないって思いながら食べてた、あの味に」
みより「だからあの時……」

 

 

× × ×
(フラッシュバック)
みよりの料理を食べて、涙を流すナツキ。
× × ×

 

 

ナツキ、ベッドから起き上がる。
ナツキ「ありがとう、みより……」
みより「ううん。私の方が助かってるし。こっちこそありがとう。拾ってくれて……」

ナツキ「約束はちゃんと守る」
みより「えっ」
ナツキ「やっとひらめいた。会いに行こう。みよりの運命の人に」

みより「!」

ナツキ「東雲千に」

みより「えっ? しののめ?」
ナツキ「そう、東雲」
みより「あの、千くんの名字、東雲じゃないと思うんだけど?」
ナツキ「いや、東雲で間違いない。みよりが知ってるのは小学生の時の名字だろ? 母親が再婚すれば名字は変わる」
みより「(小声)あ、だから検索、引っかからなかった……?」

ナツキ「今は東雲だよ。ネットで検索したら会社のホームページも出てくる。あの、東雲ホールディングスの東雲千だから」
みより「そうなんだ。へぇ……って、えっ、東雲ホールディングス……?」
ナツキ「うん。ちょうど来週、東雲ホールディングスの創立記念パーティーがあるんだ。そこに行けば、確実に東雲千に会える!」

みより「えっ、待って。千くんって、今……」
ナツキ「東雲ホールディングスの副社長だ」
みより「ふ、副社長?! 嘘でしょ? だって、東雲ホールディングスっていったら」

 

 

○東雲ホールディングス・会社外観(夜)


高く聳え立つ高層ビル。

入口から出てくる、千。
専用の高級車が千の前にピタリと止まる。
運転手にエスコートされ、颯爽と車に乗る、千。

 

みより(心の声)「超超超、大企業じゃん! 千くんがそこの、副社長?!」

 

 

第9話・了

脚本/山下すばる

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第10話「シンデレラになれない」

10月8日(月)午後8:55公開

お楽しみに!